2006年01月17日

読書感想文。

「モーダルな事象」を読みました。
結構厚手な本だったけど、こういう推理モノは遅読なしゅんすけでも
がんがん読めちゃうもので、正味10日くらいで読破できたかな。
この作家さんは以前「鳥類学者のファンタジア」って本を読んだことがあって
これがなかなか面白かったから、この作家の本が他に読みたくて
実は本屋でかなり探して手に入れたモノだったんだよね。
しかも本人、ジャズを嗜むそうで、その辺の感覚を生かして書かれた文章は
しゅんすけの琴線を響かせるのでした。

んで、第2弾の今回の作品。
総じて満足な作品で、面白かった。
それにしても、厚い本だったな。展開も何となく冗長な感じでしたね。
ここまで長い意味はあるのだろうか?
いや、結果的にかなり複雑な事件の真相を理解させるためには、
解説する必要があるわけで、ただの解説では物語のテンポを狂わせるから、
事件を客観的に探る人物を用意して彼らにああだこうだ推理させながら、
途中全く別の推理へ読者を誘導しつつ、複雑な相関関係を伝えるという意味もあって
事件とはほとんど関係ない元夫婦刑事なる二人が、
自身の微妙な関係を展開させながらも、物語の真相の解説役を担ってたから、
こういう冗長さも意味はあったんだろうけどね。
ただ、しゅんすけがそういう邪推をするくらいまで
このストーリーのプロットは複雑だったのだろうかとも思うし
演出の効果は別としても、もっと短くても良かったんじゃないかとも思う。

物語のキーとなるアトランティスのコインを巡って、
何人もの登場人物の思惑が交錯するというのは、
果たして意味があったのだろうか。
多すぎる登場人物が話しをややこしくしている気がしなくもないわけで。
どこかの書評にもあったけど、長くしようとして長くしているのではないかとさえ
思ってしまうのでした。

ま、主人公と思しき大学教授は、アクティブに事件に関わるというよりも
意図しないところで巻き込まれ、ただただ翻弄されるだけの役のようだから
主人公をこうと決めてしまった以上、他にも登場人物を出して
フォローせなイカンというのも分かるんだけどね。
この教授が最後にこの作品のテーマらしき展開に流されていくんだけど、
このテーマを匂わすクダリも何となく取って付けたような印象があってね。

前回読んだ作品では、薄くないその本の厚さに、
計算されたプロットが、どこか作為的な匂いも残しつつ
(語り手の好みとか私見とかのニンゲン臭い表現も織り交ぜて)
どうなるか分からない展開にも、明確な方向性を持って、
話しが展開するんだけど、今回の作品では
主人公たる教授の視点と解説者たる元夫婦刑事の視点が
行ったり来たりして、展開が不透明に感じる部分もあった。
読者の視点を大事に描写しているのが分かるだけに、
話しの展開を見失うしゅんすけに読解力がないだけかも知れんけど、
気になった。
あと、もう一回読んでみようという気が起きないほどの厚さはどうかと
思うよ。いや、厚さのせいじゃないか。京極夏彦の分厚い本は
2度3度と読み返してるしな。

本の厚さと言えば、この本、新書サイズなんだけど、製本が粗過ぎる。
天地側面の三方断裁は製本の基本ですが、
上方断裁がされていないのかしないのか、折が揃ってない。
もっというと、綴じ部分の糊付けも雑。糊がハミ出てるがな。
(やっぱり上方断裁してないのでは)
こんな製本だったら、そのうち本が壊れて、バラバラになっちゃうじゃんね。
天下の○日○印刷が何やってんだか。

いろいろ書いたけど、冒頭書いたとおり、面白い作品なので、
オススメです。

ちなみに、以前しゅんすけが読んだ「鳥類学者のファンタジア」に
登場する人物や事柄が、今回の作品にも登場してるんだけど、
複数の作品に登場するどこかで相関関係のある人物同士が、
互いに知らぬままに同じ事柄を巡って、
それぞれの作品の中でそれぞれの事件(?)に巻き込まれるってのは
面白いよね。(予定調和だけどエンタテイメントということで)
そう思うと、今回の作品がやけに冗長で、登場人物が多い辺り
今後の作品にも何らかの関与があるのかもしれないね。
※もちろんそれぞれの作品を個別に楽しめるようになってますが、
他の作品にも登場する人物がここでも登場してくれて、
しれっと書かれた行間にこうした演出にニンマリする作者が想像できるというか。

ちなみに、「鳥類学者の〜」では、ジャズピアニストの主人公の
エキサイトな演奏を文章に起こすという一見不可能な表現に挑戦し、
音楽のスピード感を見事に文章で表現できてて、
本を読みながらステージに立ってるような錯覚すら起こさせる秀逸な
表現力を発揮してるのが、この作家の真骨頂というか、
しゅんすけが好きである理由のひとつだったんだけど、
今回の主人公がジャズヴォーカリストということもあってか
演奏場面の記述がなくて、ちょっと残念でした。

また、他の作品も読んでみたいね。
posted by しゅんすけ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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