2006年01月21日

読書感想文。

「博士の愛した数式」を読みました。
決定しました。今年最高の本です。まだ1月ですが、もう決定しちゃいます。
そのくらい素晴らしい本でした。
ストーリーとかよりも、何より数学を文学で表現し、
その素晴らしさを100%表現できていることに感動した。

物語がとにかく優しさ、温かさに包まれているんだよね。
数学という一見感情の入り込めない世界と人と人を繋ぐ友愛の温かさの融合に、
とにかく胸の温まる思いがするし、
博士の置かれた哀しい状況に、切ないような哀しいような感情にはならず、
逆に前向きな温かさを感じてしまうのは、作家の能力の賜物ってヤツだろうか。
読後になんか気分いいんだよね。
爽快、というのとは違うけど、なんかスッキリするというか。
推理小説でストーリーのロジックがスッキリ通った時のスッキリとは違って、
優しい温かさ、慈愛のフィルターを通したスッキリ感というのかね。
しゅんすけにはあまり芽生えなかった感情だけど、
とにかく気持ちいい話しでした。

それにしても、数学の世界と慈しみの世界を両立させるこの作家の
度量ってのはスゴイっすよ。
しゅんすけもここ何年か、日記書いたりしてて、
「お、この表現はなかなかいいぞ」とか思ったりしたこともあったけどね、
職業作家の能力にはもう全然敵いませんがな。
数学者が追い求めているモノを、文学的ビジュアル感で表現できているのが
すごい。どこかで読んだことのある言い回しだったりするんだけど、
(有名な数学者の言葉の引用とかね)
それを独自の言葉で繋いで、より分かりやすく、
まるで目の前に情景が広がっていくかのように書けるんだから、スゴイ。
数学はニンゲンがこの世に生まれる前から、いやもっと言えば
宇宙が誕生した時から、この宇宙に存在しているもので、
まさに神様がこの世を作ったレシピなわけよね。
数学者は、神様のレシピ帳に書かれていることを、
ちょっと書き写させてもらうような存在。
いや、神様のレシピ帳に書かれたこれ以上ないエレガントな表現ではなく、
料理を見てレシピを想像するようなものなのかもしれないけどね。
真理というレシピを追い求めつつ、真理の前では謙虚さを失わない数学者の
姿がそこに表現されているわけなのでした。

この小説のスゴイところは、数学の世界と文学の世界を繋ぐかのように
見えて、実は完全には接続・融合させていないトコロ。
この小説では、文学と数学は完全には融合してない。
だから、この小説を読んでも、数学のことで知識が深まったりしない。
フェルマーの最終定理について書かれてはいるけど、
その命題が秘める力と解決に辿り着くまでのドラマには言及がない。
でも、こんな素晴らしい数学の世界が、
ほとんど知られないまま本屋の棚にひっそり収まっているんだよって
教えてくれる。読者の何人かは、本屋の数学書コーナーに行き、
数学の本に触れ、新しい世界の広がりを知ることになるかもしれない。
つまり、全部を公開しないで、読者に調べさせることも想定しているのだ。
もちろん、数学的素養がなくても、全然感動できるんだけど、
博士と義姉との間に交わされるオイラーの定理の秘密が知りたくて、
本屋に行って調べちゃったもんね。
(ウィキペディアの方が的を得た回答が載ってましたが)
そういう読者操作をするのが憎らしくも、
真に伝えたいことってそういうことなんだ、と思わせる。
数学の真理探究って、広大な数の砂漠でオアシスを求めて彷徨うようなもので、
時にオアシスと思って近づくと蜃気楼だったり、すでに枯れていたりするんだよね。
そんな中で、こんこんと水を湛える泉があることを信じて、
ほとんど手探りで前に進んでいくわけだ。
小説の中で数学的問題に完全に解答を示さないことが
まさに小説で伝えたいことのひとつである数学の探求を実感させることへ
繋がっているなんて、ホント憎らしくもスゴイ演出力だ。

ちなみに、作者が参考にした数学文献のうちのひとつは
しゅんすけが絶賛してやまない「フェルマーの最終定理」でした。
参考にしたエルデシュの本も読了済だけど、博士の人柄とはちょっと違ったかな。
 

んで、ここまで読んでくれた方だけに告白。
しゅんすけ、この小説読んで泣きました。
すみません、ワンワン泣きました。犬じゃありません。
ちょっと泣きたい気分だったのは確かですが、感情を大きく突き動かされたというより
ニンゲンの温かさが最後まで貫かれてて、とても優しい気持ちのまま
最後まで読了できて、安心したという方が合ってるかもしれないけどね。
感動できる作品には違いないです。
今年一番の作品です。いや、作家の能力をまざまざと見せ付けられた辺り、
ここ2、3年では最高の本だったと言っていいと思います。
この本読んだら、より深く理解するために、数学の本を読むのもオススメです。

いや、マジでスゴイっす。
しゅんすけもまだ感動の渦が消えてないから、
表現がかなり甘いんだけどね。
posted by しゅんすけ at 16:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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